2015年3月31日火曜日

少年法と刑事手続

司法書士の岡川です。

少年法については、とりあえず今回で最後・・・だと思います。

少年法によると、成人であれば刑罰という制裁が科されるような犯罪を行った者(犯罪少年)も含めて、非行少年は、通常の刑事訴訟手続とは別の少年保護手続に乗ることになります。

そこでは、少年審判という手続が行われるわけですが、これは罪に問うための手続ではなく、国家による再教育のための方法が検討されます。
その中心的な処分が、保護観察や児童自立支援施設等への送致などの保護処分です。


しかし、少年(20歳以下の人)であればどんな違法なことをしても罪に問われることはないというのでは、法秩序を維持するうえで不合理ですし、被害者や社会の納得も得られません
また、「何をやってもお咎めなし」というのでは、そもそも少年の教育という面からもよろしくない。


そこで、少年であっても常に刑事処分が排除されているわけではなく、刑事事件として扱われることがあります。

ただし、通常の手続とは異なる特則が少年法に設けられています。

つまり少年法は、少年事件に特有の「保護処分」についてと、少年事件に適用される「刑事事件の特則」についての、の二本立てとなっているのです。
少年法の目的としても、「非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずる」と定められています。

ベタな言い方でいうところの「車の両輪」ってやつですね。


では、少年法が規定している刑事手続の特則とはどのようなものでしょうか。

まず、刑事事件として裁判所(地方裁判所や簡易裁判所)に行きつくまでの流れが違います。

何度も繰り返している通り、警察で受理された少年事件(ここでは犯罪少年に限定しましょう)は、軽微な犯罪を除いて検察に送致され、全ての事件がまず家庭裁判所に送致されます(全件送致主義)。

その後、家庭裁判所の審判を経て、刑事処分が相当だと判断されると、今度は家庭裁判所から検察官に送致されます。
これを「逆送」といいます。
特に、殺人などの重大犯罪では、原則として逆送しなければなりません。
これは、2000年の改正で新設された制度です。

そして、逆送された事件は、(一部の例外を除き)必ず起訴しなければなりません。
通常の(成人の)事件では、被疑者を起訴するかしないかは検察官の裁量に委ねられているのとは異なります。

その後は、細かい違いはあるものの、基本的には通常の刑事手続が始まります。


手続だけでなく、刑事処分にも少年法は特別の規定を設けています。

まず、懲役や禁錮は、成人とは別の施設(少年刑務所や少年院)に収容されることになります。

それから、18歳未満の少年については刑が緩和されています。
有名なところで、18歳未満の少年には死刑を科すことができません(死刑相当の事件は無期刑となる)。
また、無期刑相当の事件でも有期刑を科すことができるとされています(以前は、必ず有期刑となっていましたが、現行法は裁判官の裁量に委ねられています)。

少年法特有のものとして、「不定期刑」というものもあります(罪刑法定主義によって禁じられている「不確定刑」とは異なります)。
これは、「○年以上○年以下の懲役」のような形で言い渡される刑です。

少年は心身ともに発展途上であることから、改善更生の程度にあわせて、刑期を終える時期についても柔軟に対応することができるようになっているのです。


少年法は、罪を犯した少年に対しても寛容な態度で臨む規定となっていますが、18歳以上の少年は死刑になることもありますし、それ未満の少年であっても無期懲役になる可能性はあります(なお、「無期懲役でも数年で出てこれる」というのはガセです)。
そして、過去何度も行われた少年法改正により、少年にも厳罰化が進んでいます。

そしておそらく今後も、厳罰化は少しずつ進んでいくと思われます。


少年法のあり方は、「少年犯罪を減らすにはどうすべきか」という視点から考える必要があります。

それは、少年を「保護すべき対象」といって甘やかせばいいものでもないし、やみくもに厳罰化していけばよいというものでもありません(例えば、犯罪者を全員死刑にすればそれで社会がよくなるかというとそうでもない)。


個人的には、「制裁」も「教育」も足りていないのだろうなあと感じています。
その意味で、少年法改正の余地はまだまだありそうです。

というわけで、長々と続けてきた少年法シリーズも今日で終わりです。
長々と続いたのは、ちょっと色々あって更新頻度が減ったせいですが。

明日から新年度。
もう少し更新ペースを戻していこうと思います。


では、今日はこの辺で。

少年法シリーズ
1.少年法が対象とする少年
2.少年法の意義と理念
3.少年法における手続と処分
4.少年審判が始まるまで
5.少年審判とはどんな手続か
6.保護処分について
7.少年法と刑事手続  ← いまここ

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