2015年6月15日月曜日

少年院について

司法書士の岡川です。

神戸連続児童殺傷事件(いわゆる酒鬼薔薇事件)の元少年Aが手記を発表したことが話題になっています。
元少年Aは事件当時14歳でしたので、刑務所に入ることなく、少年法に基づいて少年保護事件として扱われ、最終的に少年院に送致されました。

以前紹介した「保護処分」の話で、少年院の話は後回しにしていましたので、忘れないうちに書いておきましょう(既に忘れてたというのは内緒)。

少年院について規定しているのは、「少年院法」という法律です。

実は昨年、この少年院法が全面的に改正されました。
もっと正確にいいますと、今までの「少年院法」(昭和23年法律第169号)が廃止されて、新しい「少年院法」(平成26年法律第58条)が制定されました。
この新少年院法が今年の6月1日から改正法が施行されています(ただし、一部だけ7月1日施行です)。

つまり、同じ「少年院法」ですが、実は今は去年までとは全く別の法律が施行されているんですね。

どれくらい違うかというと、旧法は20条までだったのに対し、現行の新法は147条まであります。
さらに、少年鑑別所については旧少年院法の中でちょろっとだけ規定されていましたが、少年院法から独立した「少年鑑別所法」という法律が新たに制定されました。


まあそれはさておき、そんな少年院の話です。

少年院とは、非行少年の処遇を行う施設です。
一般的なイメージとしては、「未成年者用の刑務所」といったところでしょうか。

もっとも、それは正確ではありません。
「未成年者用の刑務所」ということでいうと、実は「少年刑務所」という、正真正銘「未成年者用の刑務所」が存在します。

確かに、少年院は、犯罪少年に対する懲役刑を科すために収容する施設としても使われます。
少年法は、「懲役又は禁錮の言渡しを受けた16歳に満たない少年に対しては、・・・16歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。」と定めており、この規定に基づいて収容される場合に限っていえば、「未成年者用の刑務所」といえます。

しかし、それだけではなく、少年院には「保護処分の執行を受ける者」も収容します。
保護処分の一種として「少年院送致」というものがあり、少年院の役割は、少年刑務所というよりは、むしろ保護処分のための施設というのがメインです。


非行少年には、罪を犯した「犯罪少年」だけでなく、犯罪が成立しない「触法少年」や「虞犯少年」という類型も含まれています。
犯罪少年が通常の刑事手続に乗って刑罰を科されるのではなく、保護処分として少年院に送致されることもありますし、触法少年や虞犯少年が少年院送致がなされることもありえます。

いずれの場合も、保護処分は、犯罪者に対する制裁(刑罰)ではありませんから、受刑者を収容するための施設である刑務所とは本質的に異なるわけです。
そこで行われるのは、「矯正教育」です。


さて、少年院には、第一種~第四種があります。
このうち第一種~第三種が保護処分の執行ための少年院で、第四種が刑の執行のための少年院です。

第四種は旧法には無かった分類ですね。

第三種は、「保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のもの」を収容する、旧法でいうところの医療少年院に相当します。

旧法は、年齢(16歳前後)によって初等少年院と中等少年院に分かれていましたが、新法ではその区分はせず、第一種にまとめられています。

では、残りの第二種は何かというと、犯罪傾向が進んだ少年を収容するところで、旧法でいうところの特別少年院に相当します。


最初に書いたとおり、少年院法が改正され、非行少年の社会復帰の支援等も細かく法定されました。

非行少年を一生隔離するわけにはいきませんから、いずれ退院して社会で生活することになります。
そのとき再び非行(犯罪)に走ることのないよう、効果的な矯正教育がなされないといけません。

人を更正させるのは、非常に難しいことですけど、改正少年院法がうまく機能すると良いですね。


では、今日はこの辺で。

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