2017年10月5日木曜日

債権法改正について(8)(法定利率)

司法書士の岡川です。

債権法改正の話で、8回目にしてようやく債権法にたどり着きました。

今日は法定利率のお話。

世の中には「利息」というものがあります。
利子ともいいます。

例えばお金を貸して一定期間経ってから返してもらう場合、元々の金額(元金とか元本とかいう)に何%か「おまけ」がついてくるあれです。

で、この利息の額を決める際の、元本に対する割合のことを「利率」といいます。

実は、利息というのは、お金を貸せば当然にもらえるものではなくて、基本的には当事者間で「この貸金に対しては利息をもらうよ」という合意がなければなりません(これを利息契約という)。
例外的に、当然に利息が発生することもあるのですが(例えば、商人間の取引には当然に利息請求権が発生する)。


さて、利息契約があったとしても、利率を定めないこともあります。
普通は「何%の利息を支払う」というふうに利率まで含めて定めるでしょうけど、うっかり「何月何日までに元本と利息を返還する」みたいにざっくりした貸金契約をしてしまうこともあります。
あるいは、特に利息契約をしなくても法律上当然に利息が発生するような場合であれば、無意識のうちに利息は発生しているので、利率を決めていなかったりするかもしれません。

「利息が発生することは確かでも利率が決まっていない」という場合、何%の利息を付して返せばよいのか。
これを定めるのが法定利率です。

現行民法は、法定利率は年5分(1年間に5%)と定めています(404条)。


ただ、イマドキ銀行にお金を預けても0.001%とかいう超低金利時代、5%は高すぎる!という批判がありました。
といっても、消費者金融とか銀行とかでお金を借りたら15%~20%とか普通にとられるし、預金の金利と比較する必然性は無いんじゃなかろうか…とも思わなくもないですが、まあ、とにかく5%は高すぎるというわけ。

そこで、こういう規定になりました。

第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が1年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。


えーい、ややこしい!

ごちゃごちゃ書いていますが、結論的には、「最初は3%だけど3年ごとに変動する(小数点以下切り捨て)」ということです。
詳しい計算式は覚えなくても法務大臣が計算してくれます。
いや、法務大臣は計算しないけど。

ついでにいうと、商法から商事法定利率の規定(現行法では、商行為によって生じた債務の法定利率は年6分)も削除されて、民法に従うことになります。

商事消滅時効の規定も削られて商事法定利率の規定も削られると、商行為かどうかで結論が変わる場面が減りますね。


では、今日はこの辺で。

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