2016年9月16日金曜日

財産管理等委任契約の活用とその危険(その1)

司法書士の岡川です。

相続財産の管理には相続財産管理人という制度があります。
行方不明者の財産の管理には不在者財産管理人という制度があります。
判断能力が不十分な人の財産の管理には成年後見人という制度があります。

では、本人は生きているし、行方不明にもなっていないし、判断能力は問題ない、でも財産を第三者に管理してもらいたい、という場合はどうすればよいでしょうか。

若くて健康的な人にとっては関係ないことではありますが、例えば高齢で一人暮らしであったり施設に入所していたりすると、毎月の諸費用の支払いとか日々の財産管理とか、あるいは役所の手続きとかが大変になってくる方もおられます。

また、詐欺や消費者被害などに遭うのは、必ずしも明確に認知症等で判断能力が低下している方だけとは限りません。
認知症でもなく、判断能力が低下しているわけでもなくても、騙されることはあります。
以前、特殊詐欺の話も書きましたが、どんなに気をつけていても限界があるものです。
最近は、スマホアプリによる詐欺被害に遭う中高年の方も増えているようですし、古典的な特殊詐欺も依然として蔓延しています。

しかし、「判断能力が正常」であるということは、逆にいうと法的な救済手段も限定的だということです。

判断能力が正常なのであれば、自己責任が基本ですから、成年後見人のように、問答無用で契約を取り消したりすることはできません。

なんとか詐欺をや不法行為を立証したり、各種消費者法に定められた取消しの要件を検討して主張することになります。
また、仮に法的には契約取消ができたとしても、実際にお金を取り戻すのは難しいこともあります。


そうすると、騙されないためには(あるいは、騙されてもお金を取られるのを防止するには)、大事な財産は第三者が管理するというのも有効な選択肢のひとつになります。


そういう場合に利用されるのが、財産管理等を委任する契約を締結するという方法です。

よく行われるのは、「任意後見契約」と同時に「財産管理等委任契約」(「任意代理契約」といわれることもあります)を締結し、認知症になるまでは委任契約に基づいて財産管理をしてもらい、認知症になった後は任意後見人として財産管理をしてもらうという方法です。

専門職後見人として後見業務を行っている司法書士も、任意後見契約とセットで財産管理等委任契約を締結するケースは少なくありません。

(具体的な活用方法については、当事務所のホームページの「任意後見制度について」に詳しく書いています。はい宣伝です。)

これは別に法律で定められた制度ではなく、あくまでも委任契約(準委任契約)の一種に過ぎませんので、どのような契約にするのかは専ら当事者間の合意に基づきます。
契約自由の原則ですね。

なので、契約の名前も色々で、似たような契約をNPO法人などが行っていることもあります。
また、契約なので自由に内容を決めることができるので、その人に応じた使い方が可能になります。


ここで気を付けなければいけないのが、財産管理等委任契約は、法律で定められた制度ではないので、その財産管理人を監督する立場の第三者が全く存在しないということです。

高齢者から大量に預託金を預かり、それを事業資金に流用したまま破産した「日本ライフ協会」の事件は記憶に新しいところです。


次回、財産管理等委任契約の危険性について解説します。


では、今日はこの辺で。

財産管理等委任契約の活用とその危険(その2)

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