2015年9月22日火曜日

公証人

司法書士の岡川です。

公務員の中には、中央省庁や市役所に勤めている職員だけでなく、少し変わった立場の人がいます。
以前紹介した「執行官」というのも、裁判所職員(公務員)なのに国から給料をもらっていない(独立採算制)という特徴がありました。

今日ご紹介するのは、そんな執行官よりもっと特殊で、おそらく執行官よりは一般にもなじみがあるであろう「公証人」です。


公証人とは、公正証書を作成したり、私署証書や定款等に認証を与えたりする権限を有する公務員をいいます。

その身分や立場は「公証人法」という漢字カタカナ混じりの文語体で書かれた古い法律に規定されており、一般の国家公務員や地方公務員とは丸っきり異なっています。

まず、あまり知られていないかもしれませんが、公証人は法務局(地方法務局)に所属しています(公証人法10条)。
といっても、登記官みたいに法務局の中で勤務しているわけではなく、法務局に行っても公証人には会えません。

公証人は、別に「公証役場」という事務所を構えており、そこで執務を行います。
全国に500人くらい公証人がおり、公証役場は300か所くらいあるみたいです。


「そんな役場は見たことない」という方も多いでしょう。
「公証役場」は「役場」といっても、市役所や町役場みたいな庁舎があるわけでなく、多くは民間のビルの一室とかにあります。
なので、「役所」というより「事務所」といった方が近い。

例えば、私がよく使っている高槻公証役場は、「ミドリ芥川ビル」というビルの2階にあります。
高槻駅前の西武百貨店の近くですね。

1人または複数人の公証人と、公証人に雇われた事務員(公証人法上は「書記」といいます)が働いている個人事務所をイメージしていただ

くといいでしょう。

しかし、我々司法書士や弁護士のような民間の法律実務家(個人事業主)と異なり、法務大臣に任免されます。
公証人に任命される人の多くは、裁判官、検察官、法務省職員の出身者ですが、たまーに弁護士や司法書士出身者が任命される例がありま

す。
公務員ですから、任命権者である法務大臣の監督下にあります。


公証人の仕事は、冒頭に書いたとおり、公正証書の作成です。
公正証書は、遺言や契約書、離婚協議書などに使われます。
また、私文書として作成されたものに認証を与えたり、会社設立の際に定款を認証するのも公証人の仕事です。

法務局に所属してはいるものの、法務局の職員というわけではないので、国から給料はでません。
なので、公正証書の作成や定款認証等の際に客(「嘱託人」といいます)が支払った手数料が公証人の収入になります。

手数料の額は、公証人手数料令という政令で決められていますので、自由に決めることはできません。
この辺は公務員っぽいですね。


ちなみに「公務員」といっても多義的で、広義では、「国や地方公共団体の公務を担当する者」ということになります。
この意味において公証人は公務員であり、刑法や国家賠償法における「公務員」にも含まれます。

しかし、国家公務員法や地方公務員法における「公務員」には含まないと解されていますので、法務局(これは法務省の地方支分部局)に所属しているといっても、国家公務員法は適用されないのです。


ところで、「公証人」という制度は、世界的にみれば中世ヨーロッパあたりで発祥したものですが、日本では明治時代に司法書士・弁護士とともに、司法制度を支える職務として成立しました。
この辺の詳しい話はまたそのうち。

では、今日はこの辺で。

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