2015年3月13日金曜日

少年法における手続と処分

司法書士の岡川です。

ちょっと間が空いてしまいましたが、前回に引き続き少年法の話の続きです。

少年法が適用されるのは、罪を犯した少年(犯罪少年)に限らず、触法少年や虞犯少年を含めた「非行少年」であることは以前説明しました。
ということは、少年法における手続は、必ずしも刑事手続逮捕されて起訴されて判決を受けて刑が執行される)とは限らないわけです。

少年法では、3類型の非行少年を「審判に付すべき少年」としており、「家庭裁判所の審判に付する」と規定しています(少年法3条)。
この審判を「少年審判」ともいいますが、ここでいう「審判」は、審理と判断を含めた手続の全体を含む意味です。

つまり、犯罪少年も含めた全ての非行少年については、「刑事事件」ではなく「少年保護事件」として扱われ、地方裁判所や簡易裁判所における「刑事手続」とは別の、家庭裁判所における「保護手続」に乗ることになります。


一般的には、ニュースになるような少年事件は、警察に検挙された犯罪少年が家庭裁判所に送致された事件多いと思われます。
その他にも、一般市民からの通告や家庭裁判所調査官からの報告、14歳未満の少年については都道府県知事や児童相談所長からの送致によっても開始されます。


少年保護手続の対象には犯罪少年も含まれているとはいえ、「犯罪者を裁く」ことを目的としたものではなく、少年を更生させ、再発防止を目的としたものです。
刑事事件のように「有罪か無罪か」を決めて終わりではないので、家庭裁判所に事件が受理された後の非行少年の処遇については、いろいろなルートに分かれます。

まずは、少年審判を開始するかしないか。
家庭裁判所は、「審判を開始するのが相当であると認めるとき」は審判開始の決定をし、そうでない場合(非行事実が認められない場合や、審判に付す必要がないと判断される場合)は審判不開始決定がなされます。

実は、家庭裁判所における平成25年の既済の保護事件約12万件のうち、半数近くの約54,000件が審判不開始決定で終わっています。


審判開始決定の後は、いろいろと審理が行われて結論が出されるわけですが、次のようなものがあります。

非行少年に対して家庭裁判所が何らかの処分を行うのが相当である場合。

家庭裁判所が非行少年に言い渡す処分を「保護処分」といいますが、保護処分には、保護観察処分、児童自立支援施設や児童養護施設への送致、少年院送致の3種類があります。

保護処分決定がなされたのが約24,000件で、そのうち約20,000件が保護観察で多数を占めます。
少年院送致は3,000件くらいで、児童自立支援施設等への送致は約300件程度です。

犯罪少年の処遇につき、刑事事件に移行させるのが適当な場合は、検察官送致決定がされます。
検察官から家庭裁判所に送致されてきたものを、また検察官に送致するので、これを俗に「逆送」といいます。
逆送されるのは、約5,000件ですが、そのほとんどが道路交通法違反か年齢超過(20歳以上)というパターンです。


その他、児童相談所等に送致されるという処分も少しあります。

保護処分も検察官送致も児童相談所装置も必要が無い、というような場合は、不処分決定がなされます。
これが約21,000件と、保護処分と同じくらいあります。


審判不開始と不処分決定で6割以上を占めるわけですが、一般の刑事事件の起訴率も3~4割程度(つまり、6~7割は不起訴)なので、少年事件でも同じくらいの割合で何らかの処分がなされているということですね。


というわけで、今回は、少年事件ではどういう手続があるのかの概要をご紹介しました。

次回は、少年審判の話か、保護処分の話か、刑事手続の話か、その辺をする予定。

では、今日はこの辺で。

少年法シリーズ
1.少年法が対象とする少年
2.少年法の意義と理念
3.少年法における手続と処分 ← いまここ
4.少年審判が始まるまで
5.少年審判とはどんな手続か
6.保護処分について
7.少年法と刑事手続 

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