2015年3月2日月曜日

少年犯罪の「質」の変化

司法書士の岡川です。

名古屋大学の女子学生による老女殺害事件。
川崎の中学1年生殺人事件。

いずれも最近起きた衝撃的な少年犯罪です。


凶悪な少年犯罪というのは、昔からしばしば発生しており、決して増加しているわけではありません。
統計でみれば少年事件はここ10年で減少傾向にあり、特に凶悪犯(殺人や強盗など)の減少が著しい。

さすがに最近は、テレビで「少年犯罪が増えている」という解説をする人はあまりいませんが、その代わり、「少年犯罪の質が変化している」とか「少年犯罪が凶悪化している」といった薄っぺらいコメントをするコメンテーターは根強く存在します。

彼らは、印象だけで喋っているのでしょうが、テレビで話題になるような事件は、もともと凶悪で異常なものなのです。
そして、そういう事件は今に始まったことではありません。

例えば、佐世保の小6女児同級生殺害事件は2004年なので11年前、光市母子殺害事件は1999年なので16年前、神戸児童連続殺人事件(いわゆる酒鬼薔薇事件)は1997年なので18年前、山形マット死事件は1993年なので22年前、女子高生コンクリート詰め殺人事件は1988年なので27年前の事件です。

それより以前にも、有名な凶悪少年犯罪はいくつも発生しています。
そしてそのたびに世間に衝撃を与えてきたのです。

死刑を選択する際の、いわゆる「永山基準」で有名な永山則夫事件も少年事件であり、これは1968年ですから47年も前の事件です。


「質が変化した」というコメントする方々は、何をもって「質」といい、それがどう変化したと言っているのでしょうか。

確かに、インターネットやスマホ、SNSやソーシャルゲームといったツールが普及し、犯行の動機、経緯、背景等は変化しました。
それによって、全く新たな形態の犯罪(出会い系サイト詐欺とか)が発生したというのは事実です。
しかし、それらが無かった事件に異常な行動をする少年がいなかったかというとそうでもないし、残虐な殺害方法が無かったかといえばそんなこともありません。
殺人事件等の凶悪犯罪に関していえば、別に「質」は変化していないでしょう。
昔も今も、凶悪なことに変わりはありません。

「首を切断して校門の前に置く」という行動を起こした少年が現れたのは、スマホはもちろん、パソコンもそれほど普及していなかった頃の話です。
集団で「女子高生を誘拐し、強姦し、監禁し、暴行し、コンクリート詰めにして遺棄する」という行動を起こした少年らが現れたのは、さらにその10年近く前の話です。
昔から、ナイフで首を切ったり、集団で暴行して殺害したりという話はあったのです。

少年か成年かにかかわらず、世間に衝撃を与える凶悪な犯罪は、常に発生し続けてきました。
凶悪な犯罪を防ぐのに、昔との「質の変化」なんか考えても仕方がない。
そういう犯罪は、毎回「異質」なのですから、「昔」と「今」で犯罪の質が変化したのではなくて、「前回の事件」と「今回の事件」が違っていたというだけの話。

そして、時代とか社会の変化のようなところに、特異な凶悪犯罪の本質はありませんし、異常な凶悪犯罪を防止する手がかりもありません。

少年犯罪が報道されるたびに、薄っぺらいコメントをテレビで聞くことになるのでウンザリです。

では、今日はこの辺で。

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