2015年2月4日水曜日

婚姻の取消し

司法書士の岡川です。

離婚意思がない場合は婚姻が無効になりますが、それとは別に、婚姻を取り消すことができる場合があります。
婚姻関係を解消するという意味で離婚と似ていますが、離婚とはまた別です(離婚は、婚姻が無効になるわけではないので)。

「気が変わったからやっぱやめた」といって取り消すことができるわけではなく、取り消せるのは一定の条件を満たす場合に限定されています。

まずは、不適法な婚姻です。
不適法な婚姻であっても、無効原因とはされていませんので、一応有効なものとして扱われます。
そもそも不適法な婚姻は、届出時に役所ではねられるものなので、審査をすり抜けて受理されてしまった場合ということになります。
無効ではないとはいえ、そのまま置いておくのもよろしくないので、当事者の意思により取り消すことができるとされているわけです。

「不適法な婚姻」とは、婚姻適齢(男18歳、女16歳)に達しない婚姻、重婚、再婚禁止期間内の婚姻、近親婚、直系姻族間の婚姻、養親子間の婚姻です。

それから、詐欺・強迫による婚姻です。
騙されたり、脅されたりして婚姻してしまったとしても、取り消せるということです。

詐欺や強迫による契約は取り消すことができるのと同じですね。


この婚姻取消の制度ですが、当然ながら取消権者(取り消すことができる人)は一定の範囲に限られます。
いきなり近所の人がやって来て、「あんたのとこの婚姻は不適法だから取り消す!」と言い出すと困るからです。

不適法な婚姻では、各当事者とその親族(重婚や再婚禁止期間内の婚姻では、当事者の配偶者や前配偶者も)、それから公益を代表して検察官です。
詐欺・強迫による婚姻では、詐欺や強迫を受けて婚姻した人です。

取消期間も決まっています。
不適齢婚では、原則として適齢に達するまで。
再婚禁止期間内の婚姻は、原則として前婚の解消・取消しの日から6か月まで。
詐欺・強迫による婚姻は、原則として詐欺を発見したり強迫を免れてから3か月まで。

取消しの方法も、契約の取消しのように相手に意思表示すれば済むのではなく、必ず「家庭裁判所に請求」しなければいけません。
具体的には、婚姻取消訴訟を提起する(その前に婚姻取消調停を申し立てる)ということです。

取消しの効果としては、遡及効がなく、将来に向かって無効となるにすぎません。
契約の取消しは、遡及的に無効になりますが、それとは効果が異なります。

その結果、取り消されるまでの間に生まれた子は嫡出子になります。
あまり身分関係を不安定にさせないような規定になっているのです。

とまあ、そう頻繁に出くわすことではないですが、婚姻にも取消しという制度があるというお話でした。

では、今日はこの辺で。

0 件のコメント:

コメントを投稿