2015年1月22日木曜日

債務不履行の話

司法書士の岡川です。


債務というのは債権の対概念で、誰かに対して一定の行為をする義務をいいます(参照→「債権と債務」)。
借金(金銭消費貸借契約)をすれば、債務者(借主)は債権者(貸主)に対して「借りた金を返す」という債務を負っています。
売買契約をすれば、買主は売主に代金を支払う債務を負いますし、売主は買主に目的物を引き渡す債務を負います。
売買契約のように、契約当事者が双方に対価的な意義を持つ債務を負う契約を「双務契約」といいますが、一方的に債務を負う契約(片務契約)もあります。
贈与なんかが典型的な片務契約ですね。
受贈者は対価的な債務を何も負っていませんので。

債務者がその義務を果たさない(民法の条文の文言としては「債務の本旨に従った履行をしない」)ことを「債務不履行」といいますが、伝統的な理解では、債務不履行には大きく分けて3つの類型があると説明されます。


1.履行遅滞

まずは履行遅滞。
読んで字のごとく、履行を遅滞する(遅れる)ことをいいます。
「何月何日に100万円を返す」という約束(契約)だったのに、その日を過ぎてもお金を返さなければ、それは履行遅滞ということになります。


2.履行不能

履行したくてもできない、という状況も考えられます。
「この車をあげる」という贈与契約をした後で、引渡しまでに目的の車が交通事故で全損してしまった場合などです。
無いものはあげようがないので、履行時期になる前にも債務不履行となります。


3.不完全履行

形式的には履行がされたが、それが「債務の本旨に従った」完全なものではない場合です。
例えば、ネットで本を注文した(売買契約)ら、届いた本が上下逆さまに印刷されていたような場合ですね。
「本は本やろ?」と言われても「そういう問題ちゃうやろ」となります。

債務不履行があれば、債権者は当然ながら「きちんと履行しろ」と請求することができます。
また、債務者に帰責事由(故意・過失等)がある場合、債務不履行によって損害が発生すれば、債権者は損害賠償請求をすることができます。
帰責事由というのは、法律の条文には出てこないのですが、伝統的にはこれが要件となっています。
つまり、不可抗力の場合(例えば、車をガレージ内に停めていたのに隕石が直撃して全損したとか)、債務者は損害賠償責任を負わないわけです。
それから、契約の場合は、債務不履行を理由として契約を解除することができます。
双務契約では、債権者は契約を解除することで、自分が負っている債務から解放されることができます。
例えば、建物賃貸借契約で賃借人が賃料債務を履行しない場合、家主は、契約を解除することで賃借人に建物を使わせる債務から解放され、明渡請求をすることができます。

ところで、債務不履行は民法上の問題なわけですが、貸した金も返さない相手を警察に突き出すことはできるでしょうか?

その辺の話は次回書こうと思います。


では、今日はこの辺で。

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