2014年10月22日水曜日

「家事」の意味

司法書士の岡川です。

「家事」といえば、皆さんは何を思い浮かべますか?

炊事、洗濯、掃除・・・。

それらも「家事」ですが、法律問題においても「家事」という言葉があります。

「民事事件」「刑事事件」のほかに「家事事件」という言葉を聞いたことはありませんか?
ここでの「家事」は、家の中の仕事の意味ではありません。

家事事件とは、家事事件手続法が規定している、家事審判や家事調停に関する事件のことをいいます。
具体的には、親族関係や相続、扶養、後見といった分野の事件です。
国との対立ではなく、個人の(私法上の)問題なので、民事事件の一種(家族法分野)ともいえますが、契約関係とか不法行為とかとは少し異なります。

離婚調停とか、遺産分割調停とか、後見開始の申立てとか、相続財産管理人選任の申立てとか、家事事件の多くは家庭裁判所で取り扱われています。
家事事件を取り扱うために作られたのが家庭裁判所・・・といった方が正確ですかね。
親子関係の有無とか事理面識能力の程度とか相続人の存否とかを判断する家事事件は、簡易裁判所とか地方裁判所で取り扱われる一般民事事件とは少し毛色が違うため、特別な裁判所が存在するのです。
もちろん、特別な裁判所といっても、扱う事件や手続に特徴があるというだけで、一般の司法システムから外れているわけではありません。
家庭裁判所の判断に不服があれば、高等裁判所に上訴することができますし、最終的に最高裁判所まで行くこともできます。


家事事件では、遺産分割調停のように金銭の問題が絡んでいる手続もありますが、その場合も法律や契約の解釈で白黒つけるというより、相続人同士の話し合いで解決を図ったり、離婚による財産分与のように「一切の事情を考慮」して決めたりと、やはり一般民事事件とは少し異なります。

裁判所に持ち込まれる事件についても、当事者の考えが重視されるため、代理人同士で法律論争をするというより、基本的には本人が裁判所に足を運んで話をすることになります(もちろん、問題が複雑だったり深刻だったりすれば、弁護士を代理人にして争われます。芸能人の離婚裁判とか)。


ついでなので、関連して「人事」という用語もあります。

会社内で誰を採用するだとか、どこに配属するだとか、どういう役職に就けるだとか、そういう問題・・・は、確かに人事ですが、それとは別に「人事訴訟」というものがあります。

「人事訴訟」というのは、そういう会社の人事に関する訴訟ではなくて、身分関係の形成や存否の確認を目的とする訴えに係る訴訟です。
親子関係とか婚姻関係といった身分関係のことを指して「人事」というわけですね。

なので、「人事に関する訴え」といっても、「降格させられた人事は不当だ!」とかいって会社を訴えるのは人事訴訟ではありません。
それはただの民事訴訟です。

昔は人事調停というのもあったのですが、今でいう家事調停ですね。


というわけで、民事と刑事に加えて家事と人事という用語も覚えておくと、何かの役に立つかもしれません。
具体的に何の役に立つかは、ちょっと思いつきません。


では、今日はこの辺で。

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