2014年8月1日金曜日

相続人が死亡した場合の遺産の行方

司法書士の岡川です。

人が死亡したら、相続が開始します。

「相続は、死亡によって開始する」

かの有名な川柳・・・もとい民法882条の条文ですね。

では、遺産分割などの相続手続をしようと思ったら、既に相続人が死亡していた・・・という場合、元々の相続関係はどうなるのでしょうか。


1.相続人が被相続人より先に死んでいた場合

相続権は、生きている人に帰属する権利です。
だから、既に死んでいる人には、相続権はありません。

例えば、Aに妻Bと子Cがいたとします。
この場合、Aが死んだときは、BとCが相続人になります(Aのことを「被相続人」といいます)。

Aより先にBが死んでいた場合、Bは相続人になり得ません(既に死んでるから)ので、Aの相続人はCだけです。

Aより先にCが死んでいた場合、Cが相続人ではないのは当然(なぜなら既に死んでいるから)ですが、もしCに子D(Aからみれば孫)がいれば、DはAの相続人になります。
これを「代襲相続」といいます。
Cに代わってDが相続人の地位に納まるわけですね。

さらに、Aより先にCもDも死んでいた場合、CもDも相続人ではない(しつこいようですが既に死んでるから)ですが、もし仮にDに子E(Aからみれば曾孫)がいれば、EはAの相続人になります。
これを「再々代襲」といいます。

ついでにいうと、Aより先にCもDもEも死んでいた場合で、Eに子F(Aからみれば玄孫)がいればFが相続人(再々々代襲)です。
これは理論上どこまでいっても、代襲が生じます。

子とか孫とか曾孫といった直系卑属がいない場合は、直系尊属(父母や祖父母)が次順位の相続人になります。
直系尊属が相続人になる場合は、代襲という制度は存在しません(例えば、祖父母の子=叔父叔母が代襲相続人になることはない)。

直系卑属も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人です。
兄弟姉妹が被相続人より先に死んでいた場合、その子、すなわち甥姪が代襲相続します。

例えば、Gに子も両親もおらず、弟のHがいた場合、HがGより先に死んでいた場合は、Hに子I(Aからみれば甥姪)が代襲相続します。

しかし、Gより先にHもIも死んでいたばあい、たとえIに子Jがいたとしても、そこに「再代襲」ということはありません。
兄弟姉妹の相続に関しては、「代襲」までなのです。


2.被相続人の後に相続人が死んだ場合

例えばAに子Bがいて、孫Cがいた場合、A→Bの順番に死ねば、A→B→Cという順番に相続することになります。
A→Bの相続手続をして、その後にBが死ねばB→Cの相続手続をする、というのが基本になります。

では、Aが死んでA→Bの相続手続(遺産分割や相続登記等)をする前にBが死んでしまった場合どうなるか。

相続は死んだ瞬間に開始しますので、その後、相続人が死んだとしても、既に相続は開始しています。
「相続人の相続人」がいれば「相続人としての地位」がさらに相続されることになります。
つまり、「B相続人C」がBに代わってA→Bの相続手続を行うことになるのです(同時にB→Cの部分もやるのが一般的です)。
こういう場合を「数次相続」といいます。

Bが先に死んでいた場合にA→Cというふうに、「1個飛ばし」で相続されるのが代襲相続ですので、A→B→Cと相続される場合は代襲相続ではありません。

「甥姪の子」は、上記のとおり「再代襲」をすることはできませんので、被相続人より先に甥姪が死んでいた場合は、その子が遺産を承継することはありません。
しかし、被相続人より後に甥姪が死んだ場合は、その子は「相続人(甥姪)の相続人」という立場で、最終的に遺産を承継できます。
これは、数次相続であって再代襲ではないからです。


このように、遺産分割の場面になって「相続人が既に死んでいる」と分かったとき、相続人が被相続人より先に死んだのか後に死んだのかは非常に重要です。
それによって、相続人が誰なのかが変わってくるからです。

必ずしも、「共同相続人はもう死んでるから遺産は全部自分のもの」となるとは限らないので、注意しましょう。

では、今日はこの辺で。


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