2014年7月24日木曜日

そもそも「刑罰」とは何か

司法書士の岡川です。

2回にわたって「過料は刑罰とちゃうんや。行政上の制裁なんや」と繰り返してきましたが、そういえばそもそも「刑罰」とは何かということを書いてませんでした。

刑罰とは何かというと、ふわっと定義すれば、犯罪に対して法律が用意した効果です。
その本質は、応報であるとか更生の手段であるとか教育であるとか色々いわれていますが(これは非常に深~いテーマなので後にとっておきましょう)、基本的には応報だと考えてください。
なんやかんや言ったところで、刑罰は「犯罪者に対する制裁」にほかなりませんからね(この考え方に反対する立場も有力なんですが)。

そして、形式的には刑法9条に規定されています。
今年のトレンドの「9条」ですね。
(刑の種類)
第9条 死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

犯罪の類型については、刑法だけでなく様々な法律に規定されているのですが、刑罰の種類は、刑法9条に書かれたこの7種類だけです。


「死刑」は、改めて説明をするまでもなく、生命を奪う刑(生命刑)です。
日本の死刑は、「絞首」(11条)と定められていますが、実際の執行方法は「首を絞める」のではなく、「天井に固定した縄を首にかけて床を抜く」という方法がとられます。
これを、正確な日本語では「縊首」といいます。
なので、「縊首」するのは、「絞首」と定めた刑法に反するのではないかという議論もあったのですが、裁判所では、「縊首」も「絞首」の一種だという判断がされています。

死刑はもっとも重い刑罰であり、基本的に、他人の生命を奪ったり、大量に奪う危険のある犯罪類型のみに死刑が規定されています。


「懲役」と「禁錮」は、どちらも刑務所に収容して自由を奪う刑(自由刑)です。
違いは、懲役は刑務所内で作業をさせられますが、禁錮は基本的に刑務所に入れるだけ。
ただ、実際には禁錮でも希望すれば作業に参加できるので、作業をする人も多いようです(何もせずに刑務所内でじっとしておく方が辛いのでしょう)。

あまり懲役と禁錮を区別する意味もないので、自由刑を一元化しようという議論もあります。

「拘留」も同じく自由刑で、刑務所に収容されるのですが、その期間が30日未満のものをいいます。


「罰金」と「科料」は、どちらも金銭を納めさせる刑(財産刑)です。
そのうち、1万円未満のものを「科料」といいます。


以上が「主刑」といって、単独で科される刑です。
それに対し、主刑に付け加えて科される刑が「付加刑」といって、「没収」がこれにあたります。

「没収」は、犯罪に関係する物を奪う刑です。
例えば、殺人に用いた包丁とか、文書偽造罪に問われた場合の偽造文書などです。



刑罰はいずれも、それ自体は「人権侵害」です。
死刑は人の生命を奪うし、懲役は人の自由を奪うし、罰金は人の財産を奪います。

それが正当化されるのは、それを正当化するだけの理由、すなわち、犯罪を予防するという目的があり、それに資するからです。
人権を侵害するデメリットを上回るメリットがあるからこそ、「国家による合法的な人権侵害」として用意された制度です。

刑罰を科すには、慎重さが求められ、無罪の推定とか罪刑法定主義といった原理原則があるのはそのためです。

では、今日はこの辺で。


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