2014年7月2日水曜日

症状固定と後遺障害

司法書士の岡川です。

交通事故による損害賠償請求をする場合において、「症状固定」や「後遺障害」が問題となることがあります。
両者は相互に密接に関連する概念で、損害賠償額を算定するうえで非常に重要な概念です。

傷害を受けた場合の損害賠償は、別に交通事故に限った話ではないのですが、交通事故では自賠法(自動車損害賠償保障法)が適用され、自賠責保険から保険金が支払われることになります。
「後遺障害」は、その自賠法に規定されている法律用語なので、交通事故の場合によく出てくるのです。

そして、この後遺障害という法的概念は、一般的な「後遺症」よりもっと限定された意味を持っていますので注意が必要です。


さて、交通事故により傷害を受けたとします(いわゆる人身事故です)。
受けた傷害については病院で治療をします。
治療して「完全に元通りに回復」したらよいのですが、現代の医療も万能ではありませんので、どうしても「完全に元通りに回復」というわけにはいかない場合があります。
ある段階に至ると症状が安定して、「医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態」、平たくいえば、「治療を続けても、それ以上の症状の改善が見込めない状態」になることが多々あるのです。

この状態を「症状固定」といい、症状固定に達した日を「症状固定日」といいます。

そして、症状固定日以後も身体に残存する障害を「後遺障害」といいます。

症状固定までは、治療に要する費用は「治療費」として認められますし、通院のための交通費も傷害に対する損害として認められます。
しかし、症状固定後は、「治療しても効果がない」ので、それ以上の治療費や交通費は交通事故による損害とは認められません。
もちろん、症状の改善を願って治療を続けても構いませんが、その費用は自己負担となります。


そうはいっても、障害が残存しているとすれば、その後も財産的、非財産的損害を受けることになります。
そこで、治療費などは支払ってもらえませんが、後遺障害は後遺障害で別途損害賠償の対象となります。

例えば、傷害に対しては、通院期間に応じた通院慰謝料がもらえますが、後遺障害に対しては、それとは別に後遺障害慰謝料が認められています。

ただし、何らかの後遺症が残っていれば、自動的に後遺障害に対する損害賠償が認められるかというとそういうわけでもありません。
基本的に、損害賠償の対象となるのは、1級~14級の「後遺障害等級」が認定された場合に限られます。
認定するのは、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所というところです。

ここで後遺障害等級が認定されない場合(軽微な場合など)は、「非該当」といって、法的な意味での「後遺障害」は存在しないと評価されることになります。
非該当となっても、裁判所に訴えれば裁判所が独自に後遺障害を認定することもありますが、基本的には、等級認定というものが極めて大きな意味を持っています。
後遺障害が認められなかった場合は、症状固定後ですので治療費は認められませんし、後遺障害に対する損害賠償もありません。


このように、症状固定前と症状固定後では損害賠償の項目が異なり、損害額の算定方法も変わりますので「いつ症状固定とするか」は、非常に重要なのです。

後遺障害が認められた場合、どのような損害賠償をしてもらえるかは、また後日。

では、今日はこの辺で。


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