2014年6月6日金曜日

合同会社の話

司法書士の岡川です。

昨日の記事に出てきましたが、合同会社というのは耳慣れない言葉だな、と思われた方も少なからずおられると思いますので、ついでに合同会社の話もしておきましょう。

日本の会社法に規定された「会社」には、「株式会社」だけでなく「持分会社」という形態が存在します。

株式会社は、会社構成員(株主)の地位が「株式」の形で細分化され、所有と経営が(理念的には)分離した会社形態です(詳しくは「所有と経営の分離」参照)。
これに対し、所有と経営の分離が(ほぼ)なされておらず、会社構成員が持分権を有するとともに経営にも参加する会社形態を「持分会社」といいます。
持分会社の構成員の地位は株式のように自由に譲渡することもできません。


この持分会社は、社員(構成員)の責任に応じて、「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3種類が存在します。
中でも合同会社は、会社法制定によって新しく創設された会社形態です。

合同会社は、全ての社員が「有限責任」を負う持分会社です(厳密には、間接有限責任といいます)。
有限責任とは、出資額の限度で責任を負うことをいいます。
つまり、会社が解散することになれば、既に出資したお金は戻ってきません(その意味で責任を負う)が、それ以上に責任を負うことはないということです。
この点では、株式会社における株主と共通です。


理念的には、株式会社と持分会社には大きな違いがありますが、現実には、多くの株式会社(特に、大多数を占める中小零細企業)では、定款で株式に譲渡制限が付されていて自由な株式譲渡はできないし、株主が一人(又は少数)で株主自身が取締役になっています。
株式会社であっても、持分会社のような閉鎖的な会社形態をとっていることが多いのです。
特に合同会社は、社員の責任の点でも株式会社と共通していますので、多くの株式会社とほとんど差がありません。


では、あえて合同会社を作るメリットは何かというと、設立費用が若干安いということがあります。

まず、定款認証が必要ないので、公証人手数料が5万円ほど浮きます。
さらに、設立登記の登録免許税の最低額が6万円と低額です(株式会社は最低15万円)。
それから、役員の任期が無いので、定期的な役員変更登記が必要ありません。

大規模な合同会社になると、決算公告が必要ないとか、株主平等原則がないとか、持分会社であることのメリットが他にもあるのですが、中小企業レベルでは、登記手続にかかる費用が安くて済むことが大きなメリットです。


それでも多くの中小企業が株式会社を選ぶのは、やはり信用力とイメージの差でしょうね。
数万円をケチって融資を受けられないリスクを負うくらいなら、株式会社を選ぶ、ということです。

というわけで、起業を考えている方で、「できる限り初期費用を抑えたい」とお考えの方などは、合同会社も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

では、今日はこの辺で。


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