2014年6月29日日曜日

会社法改正のポイント

司法書士の岡川です。

株式会社や持分会社(合同会社合資会社・合名会社)について規定した「会社法」という法律があります。
実は、今から9年前の平成17年(2005年)に成立した比較的新しい法律で、それまでは、会社については「商法」という商行為や商人に関する法律の中で規定されていました。

その会社法ですが、つい最近(平成26年6月20日)、大規模な改正法が成立しました。
まだ施行はされておりませんが、来年には施行されるでしょう。
大部分の中小企業にはあまり影響のない改正ですが、それなりの規模の会社においては色々と対応が必要になってきます。


そしてなんといっても影響の大きいのは、司法試験や司法書士試験の受験生だと思われます(会社法が成立した年もかなり大変だったようですが)。
特に、現行会社法で既に勉強を始めている人は大変です。
新しい概念が出てきたり、既存の概念の定義が複雑になったりしていますので、頑張って覚えなおしましょう。


というわけで、今回の主な改正点の概略をご紹介します。

1.「子会社等」と「親会社等」の新設

現行会社法にも「子会社」「親会社」という概念は存在します。

A会社がB会社の過半数の議決権を有しているような場合のように、経営を支配する関係にある場合、A会社が親会社、B会社が子会社です。
定義上、他の「会社」に経営を支配されている「会社等」(会社、外国会社、組合)が子会社であり、株式会社の経営を支配している会社等が親会社です。

これに「」がつくと、「子会社等」には、会社以外の者に経営を支配されている法人が含まれ、「親会社等」には、法人以外で株式会社の経営を支配している者が含まれます。

とってもややこしいので、会社法と会社法施行規則の定義を図か何かでまとめないと混乱します。


2.「監査等委員会設置会社」の新設

現行法では、「委員会設置会社」という制度があります(会社法制定時に新設された制度ですが)。

取締役会設置会社と委員会設置会社では、機関構成や取締役(会)の権限等に大きな違いがありますが、その中間的な機関構成として、「監査等委員会設置会社」(「等」の位置に注意!)という制度が新設されます。

監査等委員会設置会社は、文字通り、「監査等委員会」を設置する株式会社です。

委員会設置会社と同じく、監査役は設置できず、会計監査人の設置が必須です。
ただし、委員会設置会社と違って執行役が存在せず、取締役会設置会社と同様、業務執行権限は代表取締役にあります。

取締役の任期は、従来の委員会設置会社と同じく1年です。
ただし、監査等委員である取締役の任期は2年で、定款で短縮することができません(これは、監査役と同じですね)。

監査等委員会の権限としては、従来の委員会設置会社における監査委員会の権限とほぼ同じです。
ただし、選任方法が特殊で、監査等委員会の取締役は、株主総会において「監査等委員である取締役」と「それ以外の取締役」を分けて選任しなければなりません。
従来の委員会設置会社の監査委員が取締役会で選任されたのとは異なります。

このような、「監査等委員会設置会社」という制度ができたため、従来の「委員会設置会社」については、「指名委員会等設置会社」に変更されました。
呼称が変更されただけで、基本的には従来の委員会設置会社と同じです。

なお、監査等委員会の「等」は、何が「等」なのか、条文を読んでみても分かりませんでした。
この「等」の意味について、知っている人がいれば教えて下さい。


3.社外取締役・社外監査役の定義の変更

社外取締役や社外監査役の「社外性」について、要件が厳格化されました。

大分規定が細かくなっているので、詳しくは条文を確認してもらうしかないのですが、例えば、親会社の取締役が子会社の取締役に就任する場合、社外取締役ではなくなります(現行法では、親会社の取締役であっても社外性を否定されません)。
また、兄弟会社(親会社が同じ他の会社)の業務執行取締役である場合も、社外取締役でなくなります。


4.監査役の監査の範囲の登記

公開会社でない株式会社の監査役は、定款によって、監査の範囲を会計に関するものに限定することができます。
そして、監査役の権限にこのような限定を付されている場合、当該会社は原則的な「監査役設置会社」の定義から外れます。

にもかかわらず、現行会社法では、監査の範囲を会計に関するものに限定する場合も、何ら区別することなく「監査役設置会社」として登記することになっています。
つまり、登記簿上「監査役設置会社」となっていても、厳密には監査役設置会社でない(監査役に、会計以外の監査権限が無い)こともあり得るわけです。

これは、最初から「おかしい」といわれていたことですが、今回の改正で、監査の範囲を会計に関するものに限定する場合はその旨も登記されることになります。


これらは改正のごくごく一部で、その他にも、特別支配株主の株式売渡請求権(議決権の9割以上を持っている株主は、他の株主から株式全部を売り渡すよう請求できる)が制定されたり、譲渡制限株式を発行する場合に募集株式の総数引受契約に株主総会の特別決議(取締役会設置会社では取締役会決議)が必要になったり、会社分割の際の債権者保護が強化されたりと、他にも重要な改正がたくさんあります。


ただでさえ長くて読みにくい会社法が、さらに文字数も条文数も増えてしまいました。
覚えることが一気に増えて受験勉強は大変になりますが、改正法が施行される前に合格すればよいので、頑張ってください。

(追記:平成27年度司法書士試験は、改正会社法の施行日にかかわらず、改正後の法律が適用されるようです。受験生の皆さんは気をつけて下さい。→参照

では、今日はこの辺で。


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