2014年6月18日水曜日

役員の肩書

司法書士の岡川です。

法律上、株式会社の「役員」とされるのは、取締役・監査役・会計参与(この3つが会社法上の役員)、執行役(会社法施行規則等での役員)、支配人(独禁法上の役員)くらいです。
しかし、現実の会社の経営陣の人たちは、色々な肩書を持っています。

例えば、日本の会社のトップは、基本的に「社長」と名乗っていますし、その下に「副社長」とか「専務」とか「常務」とか「統括部長」といった幹部の人がいます。

「社長」の上に「会長」がいることもありますね。
株式会社の「会長」とは、何の「会」の長なのか長年の疑問です。
ちなみに、以前はWikipediaで「会長」の説明が「取締役会の会長」となっていたのですが、「取締役会長」というのは、「取締役会-長」ではなく「取締役-会長」ですから、たぶんこの説は間違いだと思います(現在では修正されているようです)。
結局何の「会」なんでしょうね。


それはさておき、社長とか副社長とか、これらはすべて、法律上は何の意味もない肩書です。
ニックネームと同じです。
なので、会社に代表取締役(か代表執行役)がいないことは許されませんが、「社長」はいなくても法的には問題ないのです。

会社のトップが「代表取締役社長」と名乗っている場合、法的に意味があるのは「代表取締役」のほうで、「社長」というのは会社内部で決めた呼称にすぎません。

企業統治のためには、肩書があった方が便利だから任意につけているのです(定款で定めることもあります)。

そして、法的に意味がないほうの肩書については、そもそも名乗らなくても構わないものなので、肩書をつけたければ勝手につけて自由に名乗って構いません。

代表取締役が社長である必要はなく、逆に社長が代表取締役である必要もありません。
代表取締役常務がいてもいいし、取締役ですらない社長がいても構いません。

なんなら、代表取締役隊長でも、代表取締役提督でも、代表取締役兵長でも、別に構いません。


最近の会社は、CEOだとかCOOといったオシャレな肩書を付けている人もいますね。
一般的に、CEO(chief executive officer)は最高経営責任者、COO(chief operating officer)は最高執行責任者と訳されますが、日本の会社法制と全く異なるアメリカ等の会社法制における役員の呼称なので、日本の会社法にこれらに相当する役員はない(代表執行役が近いのかな)のですが、まあ、これも名乗るのは自由なのです。


このように、基本的に勝手に名乗っているだけなので、どう名乗ろうが自由なのですが、一点だけ注意が必要です。

それは、代表権を持たない人が社長とか副社長とか会長とかを名乗っていた場合、取引相手がその人を代表者だと誤認して取引すれば、実際には代表権を持っていない人による契約であったとしても、有効に成立してしまうことがあるということ(会社法354条)。
相手方を保護するためですね。

CEOとかCOOとかだとどうなるのか…この辺の判例はありません(たぶん)。

なので、代表者以外にあまり無茶な肩書を付けるのは避けましょう。
何より、ふざけてると思われますし。

では、今日はこの辺で。


この記事が「面白い」「役に立つ」「いいね!」「このネタをパクってしまおう」と思ったら、クリックなどしていただけると励みになります。
↓↓↓↓↓

※ブログの右上に、他のランキングのボタンもあります。それぞれ1日1回クリックできます。

0 件のコメント:

コメントを投稿