2014年6月13日金曜日

「違法」と「不法」の違い

司法書士の岡川です。

今日は少し専門的というよりマニアックな話。

法律に違反していることを、「違法」といったり「不法」といったりしますね。
では、「違法」というのと「不法」というのでは、意味に違いはあるのでしょうか。

日本語の意味としては、どちらも同じように法に背くことをいいます。
法律用語としても、基本的にはどちらも同じ意味です。

条文上は「不法」と規定されている場合は、実質的な意味の違法性を意味することが多い、という説明がされることもあります。
ただ、それも、用例として「そういう例が多い」というだけで、別に「違法」は形式的な違法性で「不法」は実質的な違法性である、という定義の違いがあるわけではありません。

用例の話でいえば、「不法性」という表現はあまり使われず(使うこともありますが)、性質をいうときは「違法性」というのが一般的ですね。

民法上の「不法行為」という場合は、必ず「不法」です。
これは、「不法行為」でひとつの単語だからです。


もっとも、刑法学の世界では、意識的に違法と不法が使い分けられる場合があります。
すなわち、不法とはドイツ語の「Unrecht」に対応する概念で、違法(性)はドイツ語の「Rechtswidrigkeit」に対応する概念という区別です。

その場合の不法(Unrecht)とは何かというと・・・これは、あまりにも専門的になりすぎるので省略。

ただ形式的な違いとしていえることは、この場合の「不法」は、否定的評価を受ける実体のほうを指す語で、その性質を表す語ではないんですね。
ヴェルツェルという(超有名な)ドイツの刑法学者の見解に基づく区分ですが、違法性とは法秩序との関係性(不調和)を表す概念であり、不法というのは法秩序と調和しない実体そのものを指します。
つまり、「違法性」は賓辞であり、「不法」は実体を表す名詞である、というふうに説明されます(あくまでもヴェルツェルの定義です)。

この場合、「不法」と「責任」が対応して、「違法性」と「有責性」が対応します。

まあ、ここまで厳密な使い分けをするのは、純粋理論的な分野に限られるので、あまり意識しないでいいと思いますが、明らかに両者を使い分けている文脈に出会ったら、上記のような使い分けがされている可能性が高いです。


以上、知っていても生きていく上で何の役にも立たない情報でした。

では、今日はこの辺で。

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