2014年4月1日火曜日

エイプリルフールでも許されない「嘘」

司法書士の岡川です。

今日は4月1日、エイプリルフールですね。
誰が決めたか知りませんが、今日は嘘をついてもいいらしいですよ。

私も、ユーモラスでウィットに富んだ、春らしい爽やかな大嘘を書こうと思ったりもしましたが、構想3分で考えるのが面倒臭くなったので、今日は「嘘」にまつわる本当のことを書こうと思います。
本当に本当のことです。


今日は、「エイプリルフールでした~」という魔法のコトバを唱えるだけで嘘が許される日なわけですが、それでも法律上、許されない嘘があります。
違法な「嘘」については、「エイプリルフールの抗弁」は認められませんので、注意しましょう。

許されない嘘その1「詐欺」

法律用語としての「詐欺」というのは、単に「嘘をついて騙す」というだけではなく「騙して相手に何かをさせる」場合をいいます。
民法上の「詐欺」とは、相手を騙して(欺罔行為)勘違いさせ、勘違い(錯誤)に基づいて意思表示をさせる行為です。
刑法上の詐欺も、やはり相手を騙して、財産や利益を得る行為です。

どちらも、「嘘をつく」のみならず、それによって相手と契約したり、相手から何らかの利益を得たりすれば、違法行為ということになります。

民事的には、詐欺による意思表示は、取り消すことができます(民法96条)し、刑事的には、詐欺罪(刑法246条)として犯罪となります。


許されない嘘その2「文書偽造」

嘘の文書を作成する行為は、一定の範囲で犯罪となります(こちらの記事も参照→「猪瀬氏のアレは法的にどうなのか」)。
広い意味で「文書偽造の罪」になるのは、次のような場合ですので、こういう形で嘘の文書を作ることは危険です。

1.詔書偽造等

あまりないでしょうが、「詔書」などの特別な文書を(それを使用する目的で)偽造・変造する行為です。
あなたが天皇でないのに「そうだ、国会召集しよう」とか思い立って、国会召集詔書を作成したら犯罪です。

2.公文書偽造等

作成権限がないのに、公文書を偽造・変造する行為です。
例えば、「大阪市長橋下徹」名義の文書を勝手に作成したら犯罪になります(あなたが橋下徹氏であれば構いません)。

3.虚偽公文書作成等

内容が嘘の公文書を作成する行為です。
あなたが公務員で、何らかの公文書を作成する場合、そこに嘘を書けば犯罪となります。

4.公正証書原本不実記載等

登記簿や戸籍などに、嘘の記載をさせる行為です(直接敵に嘘の記載をするのは役所の人ですが、役所に嘘の申請書や届出書を出して「嘘の記載をさせる」行為です)。
例えば、虚偽登記(嘘の申請書を提出)や偽装結婚(嘘の婚姻届を提出)などです。

5.私文書偽造等

他人名義の私文書を作成する行為です。
あなたが、「司法書士岡川敦也」名義で勝手に契約書を作ったりすれば、犯罪になります(あなたが岡川敦也であれば・・・以下略)。

6.虚偽診断書等作成

文字通り、嘘の診断書(公務所に提出するもの)を作成する行為です。
あなたが医者なら、嘘の診断書は書いてはいけません。


これ以外の行為であれば、少なくとも文書偽造の罪には当たりません。
細かくみていけば、政治資金規正法とか公職選挙法に抵触するような嘘とかもあるのですが(例えば、8億円の熊手を買ったりするときは注意が必要です)キリがないのでこの辺で。

許されない嘘その3「通貨偽造」

通貨というのは、社会の信用のもとに成り立っているもので、信用がなければメモ帳にも使えないただの紙切れです。
したがって、ニセモノの通貨を作成することは、通貨の信用を損なう行為ですので、かなりの重罪となっています。

面白半分で、コンビニで1万円札コピーしたら、大変なことになりますので絶対にやめましょう。

ちなみに、コピー機は、紙幣のコピーを検知してコピーできないようになっています。
さらに、コンビニなどのコピー機では、紙幣をコピーしたら警報がなるようです。

これ、嘘じゃないですよ。
犯罪になりかねないので、試したことはないですけど。

許されない嘘その4「司法・行政手続における嘘」

嘘の被害届を出す、嘘の告訴をする、裁判所で証人として嘘の事実を話す、など、国家の司法作用を誤らせる嘘は、虚偽告訴罪や偽証罪となり、それなりに重い犯罪となります。
場合によっては、その嘘によって他人を犯罪者に仕立て上げることも可能だからです。

友達同士の会話であることないこと嘘をつきまくるのは勝手ですが、裁判官の前で宣誓してまで嘘をついてはいけません。
なお、裁判の当事者が嘘をつくこと自体は、基本的には犯罪ではありません。

また、「耳が聞こえません」などの嘘をついて障害者手帳の交付を受ける等、行政手続の過程で嘘をつくことも、場合によっては犯罪となりますので、やめましょう。

許されない嘘その5「他人に迷惑をかける嘘」

嘘によって誰かの手間をかけさせたり(業務妨害罪など)、誰かの信用や名誉を傷つけたり(信用棄損罪や名誉棄損罪)する場合は、もちろん違法行為です。
一時期、嘘の犯罪予告をして、威力業務妨害や偽計業務妨害で捕まる人が続出していましたね。
エイプリルフールだからといって、きわどい嘘をついたら、場合によっては業務妨害やら名誉棄損が成立しかねません。
なので、たとえネタであっても他者(企業)のことを書くのはオススメできません。

許されない嘘その6「嘘の肩書」

嘘の肩書で契約したりすればそれは詐欺ですけど、名乗るだけでも犯罪となることもあります。
それが、司法書士や弁護士、税理士、行政書士、社会福祉士などの独占資格です。

司法書士等は「業務独占」といって、登記申請や裁判書類作成などの業務自体も無資格で行うことができません。
また、社会福祉士やマンション管理士などのように、業務自体は誰でもできるが、その資格を名乗ることができない「名称独占」という資格もあります。

いずれにせよ、独占資格を無資格者が名乗るだけでも犯罪ですので、注意しましょう。

似たようなことで、株式会社でないのに「株式会社」を名乗ったりすることも違法ですので注意しましょう(こちらの記事も参照→「特撮ヒーロー俳優が会社法違反で警察沙汰に?」)。


というわけで、これらの「許されない嘘」には気を付けましょう。

では、今日はこの辺で。


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