2014年2月24日月曜日

意思能力の話

司法書士の岡川です。
以前、行為能力の話をしましたが、ここで意思能力の話もしておきましょう。
権利能力というのは、私法上の権利義務の帰属主体となる資格をいい、これは、全ての自然人に認められた資格です(権利能力平等の原則)。
そして、権利能力が平等にあることを前提に、法律行為を単独で行うことができる資格を行為能力といいます。
行為能力は全ての自然人に認められるわけでなく、一定の範囲で制限されている人もいます。
行為能力を制限された人たちのことを「制限行為能力者」といいます。

さて、これらは「能力」とついていますが、その中身は「地位」又は「資格」のことで、国語的な意味での「能力」とは少し違います。
他方で、有効に法律行為を行うには、文字通り一定の精神能力ないし知的能力も必要とされています。
「能力」といっても、もちろん、特殊な能力はいりません。

法律上求められるのは、「自己の法律行為の結果を理解して判断できる精神能力(知的能力)」であり、これを意思能力といいます。
基本的には、成人には皆この意思能力が備わっているものですが、重度の精神疾患のある人や、酩酊者、あるいは5~6歳くらいの幼児などは意思能力がないとされています。
意思能力がない人(これを「意思無能力者」といいます)のなした私法上の法律行為は、明文の規定はありませんが「無効」であるとされています。
制限行為能力者のなした行為は「取り消すことができる」のに対し、意思無能力者のなした行為は、取り消すとか取り消さないとかの問題はなく、そもそも効果が生じません。

誰かと何かの契約を行おうとする場合、相手が酩酊者なら、酔いがさめるのを待って契約すればいいですが、もし相手が精神疾患であった場合、そのまま契約を強行すれば、あとから「契約時に意思能力がなかった」と主張されかねません。
意思無能力の主張が認められると、契約が無かったことになってしまいます。
そこで、意思無能力が疑われる場合は、契約を差し控えるのが賢明です。
もしその契約が双方にとって必要なもので、「契約をしない」という選択が望ましくない場合、後見開始の審判を申し立てて、後見人をつけてもらうことを検討すればよいでしょう。
後見開始の審判は、契約の相手方のような第三者が申し立てることはできませんが、本人かその親族に頼んで申し立ててもらうことになります(「後見開始の申立人になれるのは誰か」)。
後見人がつけば、本人の意思無能力に関わらず、後見人が本人(被後見人)のために法定代理人として契約を行うことになります。
ただし、後見人はあくまでも被後見人のために行動します。
後見人が検討した結果、その契約が本人のためにならないと判断されれば、契約が締結されないことになります。
それは念頭に置いておきましょう。
では、今日はこの辺で。


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