2013年11月26日火曜日

自動車保険の仕組み(被害者側の保険)

司法書士の岡川です。

前回、加害者側の保険について書きましたので、次は被害者側の保険です。
被害者視点でいえば、いわゆる「自分の保険」ですね。

自分の保険の構造は簡単です。
例えば、交通事故で怪我をして、治療費を払えば、自分が契約している保険会社がその治療費の額を保険金として支払ってくれる。
あるいは、交通事故で車の修理が必要になったら、その修理費を自分が契約している保険会社が保険金として支払ってくれる。
賠償責任保険と違って、自分が契約している保険会社が自分の損害を補填してくれる…というだけの話なので、わかり易いですね。

自賠責保険は、その名の通り賠償責任保険なので、自分が被害者になっても自分が加入している自賠責の保険会社は何も補償されません。
自賠責は、完全に加害者側の保険です。
ということで、被害者側の保険になるのは、全て任意保険です。
任意保険の内容は商品によって様々なので、人的損害について補償してくれる「人身傷害補償保険」やら、車の修理費を保障してくれる「車両保険」やら、この前出てきた「無保険車傷害保険」やら、いろんな保険が組み合わされています。

基本的に交通事故も不法行為(民法709条)の一種ですので、誰かに損害が発生したら、それを補填する責任を負うのは、加害者です。
よって、加害者が損害賠償金の全額を支払ってきたり、加害者側の賠償責任保険で完全な補償がされた場合は、基本的には被害者側の保険は出る幕がありません。

ただ、加害者側の賠償が十分でなかったり、加害者側の保険で補償されない部分(損害の種類や額などによる)があったら、それは、被害者側の保険で補填することになります。
ちなみに、被害者側の保険会社は、被害者に保険金を支払ったら、その分を加害者に対して請求することができます。
本来、加害者が支払うべきものを、保険会社が(被害者救済を優先して)加害者に代わって支払ったわけですから、それを取り戻すわけですね。
これを「保険代位」といいます。
もちろん、加害者がいなかったり(自損事故)、加害者がいても支払能力がなければ、保険会社は誰にも請求できません。
そのリスクを、被害者自身ではなく被害者の保険会社が負うところに、被害者側の保険の存在意義があります。
そのために、被害者は、自分の保険をかけておくのです。
この辺の話は、以前も書きましたので「自転車事故で保険会社に損害賠償?」を参照です。


一般的には、任意保険というのは、自分が加害者になった時の補償と自分が被害者になった時の補償が組み合わされた商品となっています。
どこまで補償されるのかによって、保険料も変わってきますので、自分に合った保険を選びましょう。

あ、繰り返しますが、べつに保険会社の回し者ではありません


では、今日はこの辺で。

「自動車保険の仕組み」シリーズ
自賠責保険と任意保険
加害者側の保険
・被害者側の保険 ← いまここ

0 件のコメント:

コメントを投稿