2013年11月11日月曜日

「刑法」いろいろ

司法書士の岡川です。

「刑法」という単語には、実は2つの意味があります。

ひとつは、「刑法」という名の法律のことを指します。
この意味での刑法は、日本にはひとつしかありません。
これを、形式的意義の刑法といいます。

もうひとつは、法律の名前にかかわらず、犯罪と刑罰について規定した法(刑罰法規)の意味。
上記の「刑法」という名の法律は、もちろんこの意味でも刑法ですが、「刑法」以外の刑法もあるのです。

違反行為に罰則が規定してあるのは全部刑法なので、例えば、道路交通法、覚せい剤取締法、軽犯罪法、爆発物取締罰則、破壊活動防止法、などなど、上げていけばキリがないほどたくさんあります。
今度新設される「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」も、もちろん刑法です(参照→「悪質運転の厳罰化」)。
これを、実質的意義の刑法といいます。

刑法はいっぱいあるので、前者の「刑法という名の刑法」のことを特に「刑法典」といいます。
刑法(criminal law)の法典だから刑法典(Criminal Code)ですね。

刑法典には、基本的な犯罪類型(殺人、傷害、強姦、窃盗、詐欺、などなど)が規定されているとともに、(刑法典だけでなく)刑法全体に適用される総則的な規定が存在します。
刑罰の種類だとか、故意犯処罰の原則だとか、正当防衛だとか、そういう規定です。

このように、刑法典は、刑法の一般法として存在していますので、これを「一般刑法」といいます。
逆に、刑法のうち刑法典を除いたもの、つまり、一般刑法以外の刑罰法規を「特別刑法」といいます(一般法と特別法の話はこちら→「一般法と特別法」)。


前回までの話でいえば、危険運転致死傷罪は、刑法典=一般刑法に規定されていたのが、特別刑法に移されたということになりますね。
「基本的な犯罪類型としてはちょっと異質」ということでしょう(これは、制定当初からいわれていたことですが)。


実は、形式的意義・実質的意義の区別は、刑法だけの話ではありません。
民法でも、形式的意義の民法(「民法」という名の民法。民法典。Civil Code)と、実質的意義の民法(civil law)があります。
商法でも民事訴訟法でも、刑事訴訟法でも同じことがいえます。

形式的意義の「会社法」のことを、あえて「会社法典」と言ったりすれば、なんか法律知ってる人っぽく聞こえますので、どこかでお試しください。
ただし、法典として存在しない法律に「~典」を付けちゃって(「失火責任法典」とか)恥をかいても責任は持てませんので悪しからず。


では、今日はこの辺で。

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