2013年10月1日火曜日

相続登記は何のためにするのか

司法書士の岡川です。

公示の原則」を読んで、相続登記の必要性について疑問を生じた方はいるでしょうか?
いたとすれば、その人はなかなか鋭い。

不動産物権変動において、「公示の原則」とは、「登記をしておかなければ、第三者に『この土地は俺の物だ!』と言えない原則」でした。
登記をしないと、売主が別の第三者にも売ってしまう(二重譲渡)危険があります。

と、いうことは、不動産の名義人が死亡したとき、相続登記をする必要は何でしょう?
登記簿上の名義人は死んでいるわけだから、その人が別の人に売ってしまう可能性はないはず・・・。

細かい話をすると、相続でも第三者との関係が出てくる場面もあるので、その場合に、「公示の原則」で書いた話が妥当します。
なので、もうそれだけで相続登記はしておいた方がいいよ、と言えるのですが、実はもっと簡単な理由で、相続登記はすべきです。

それは、「相続登記を、できるときにやっておかないと、後々面倒だから」です。

あなたとあなたの子孫が未来永劫その土地を売ることもなく、贈与することもなく、担保に入れることもなく、固定資産税を納め続けるというのであれば、まあ、別に構いませんが、実際は、どうなるかわかりません。
どこかで、その土地を手放す必要が出てくることもあるでしょう。
そして、その時になれば、必ず登記が必要です。
「公示の原則」の最初に述べた通り、日本の民法によれば、売買のために登記は必須ではないので、「絶対に何が何でも登記が必要」とは言いませんが、ふつうは、買う側は登記を求めるでしょうから、現実問題として、ほぼ確実に登記は必要になります。
その時点で買主に登記を移すためには、その前提として相続人(の子孫)に登記名義が移っていなければいけません。

しかし、その時になって、「さあ、今まで先延ばしにしていた相続登記でもやってみるか~」と思い立っても、実は結構大変なことになっている可能性が高いのです。
数世代経るだけでも、ネズミ算式とまでは言わないにしても、相続人(「相続人の相続人」などを含む)の数が何十人にもなっている可能性があります。
行方不明の相続人、外国人と結婚した相続人、北海道から沖縄まで散らばった相続人、海を越えてヨーロッパ在住の相続人、その他にも離婚やら養子縁組やら、いろんな理由で、相続関係がものすごくややこしいことになっているかもしれません。

相続というのは、必ずしも親から子へ、子から孫へと向かうわけではなく、いろんなパターンがあります。
血の繋がっていない者同士が共同相続人という場面も決して珍しくありません。
数世代の相続を放置していると、そのいろんなパターンが、一気にドドドドっと押し寄せてくるわけです。
そして、見ず知らずの相続人全員(もはや、全員他人同士です。)と話を付けて、遺産分割協議を行わなければ、登記をすることはできません。
相続人全員が見つかればまだいいものの、行方不明の相続人がいることも珍しくもありませんので、その場合は、さらに時間と手間と金をかけて別の手続きが必要になります。

「そんな何百年も放置しないし、相続人が増えるといってもたがか知れている」とか思うかもしれませんが、実際には、1代でも放置すればややこしくなる可能性があります。

具体例を挙げると、ある依頼者の祖父の名義になっている土地の相続登記をしようとして、1年くらいかけて相続人を探しましたが、どうしても240分の1の相続分を有する相続人にたどり着くことができず、相続登記を断念したことがあります(実際は、もっと複雑なことになっていました)。

もちろん、追加で100万くらいかければ、何とかできないこともないのですが、諸般の事情を考慮して、最終的には、依頼者の子孫が未来永劫固定資産税を払い続けることになりました。
これは、依頼者の親の世代が、相続登記をせずに放置したためです。

ここまで極端な話にならないまでも、目先の登記費用をケチって放置すれば、後々、手間と時間とお金が余計にかかる可能性もあります。
なので、相続登記は、「できるときにやっておいた方がよい」のです。


相続登記に関する相談は、お近くの司法書士(または司法書士会の相談会)まで。(宣伝)

では、今日はこの辺で。

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