2013年9月4日水曜日

非嫡出子(婚外子)差別の違憲決定

司法書士の岡川です。

既に既定路線だったわけで、今更驚くべきことは一切ないニュースですが、「非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分の2分の1」とする民法900条4号ただし書きの規定が違憲であるとの最高裁決定が出ました。

(参照→「非嫡出子(婚外子)差別」のおさらい


民法を含め、全ての法律は、日本国憲法に合致していなければなりません。
したがって、「違憲」すなわち「憲法違反」の法令は、法令自体が無効ということになります。

憲法に合致しているかどうかの最終判断は、最高裁判所が行いますので、これで、この民法の規定は無効だということで最終的な結論が出ました。

この裁判で争われていた事件については、民法900条4号ただし書きは無視して、非嫡出子と嫡出子の相続分が同じ割合として遺産分割が行われることになります。
最高裁はその後のこと(具体的な遺産分割の内容)まで判断しないので、相続分が同じ割合であることを前提として、今後、高等裁判所で審理をやり直すことになります。

そして、最高裁が違憲だと判断した以上は、この民法の規定は「無効な規定」ということで、もはや使い物になりません。
無効な条文をいつまでも残しておいても仕方がないので、近いうちに国会で民法が改正されることになるでしょう。
保守系議員の中に反対意見が根強いそうですが、「そのような法律は、裁判所では無効なものとして取り扱う」と宣言された以上は、もはや賛成とか反対とか議論する余地はありません。
おそらく、バッサリ削除する以外に方法は無いでしょう。


ところで、今回の決定で、最高裁は、「本件規定は、遅くとも平成13年7月当時において、憲法14条1項に違反していたものというべきである。」としています。
と同時に、「それより前に相続が開始した事件についてその相続開始時点での本件規定の合憲性を肯定した判断を変更するものではない。」とも述べています。
つまり、過去の事案の時点では合憲だったけど、その後の事情の変化により、今回の事案の時点(平成13年7月)では違憲になっているということです。

では、平成13年7月以降に相続が生じて、既に「無効な規定」に基づいて遺産分割までしてしまった事案については、どうなるのでしょうか。
全部遺産分割をやり直すことになるのでしょうか。
そうなると大混乱です。

当該規定が「違憲無効」となることは、もう早い段階で既定路線だったので、法律家の関心はむしろこの点に集まっていたといっても過言ではないでしょう。
そして、既に確定した遺産分割についてまで効力は及ばない(やり直しは認められない)というのが、多数の意見で、おそらく決定の中で最高裁も違憲決定の効力について何らかの言及をしてくるだろう、と予想されていました。

で、その予想通り、決定の中で、最高裁は次のようにに述べています。
本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

一方で、まだ結論が出ていない遺産分割協議(のうち、平成13年7月以降に開始したもの)については、審判や裁判となれば、今回の判例に従い、民法900条4号ただし書きの規定が違憲無効であることを前提に判断されることになります。

したがって、今まさに「差別」された相続分を基にして遺産分割の話し合いが行われている事案であれば、「差別」のない平等な相続分で話し合わなければなりません。



ところで、もともとこの規定は法律婚という制度を守るためにあります。
一方、この規定が違憲である理由は、「親の都合だけで、生まれてきた子供に不利益を負わせてはならない」という点にあり、「法律婚を守る」ということ自体が否定されたわけではありません。

となれば、「子供に不利益を負わせない形で、法律婚を守るには、どうすべきか」という考えが出てくるでしょう。

そういう価値判断が是とされるのであれば、今後、法律婚を破壊する行為(要するに、不貞行為)に関して、当事者に対するペナルティが厳しくなっていくかもしれませんね。

では、今日はこの辺で。

続き→嫡出子(婚外子)差別違憲決定に対する批判の誤り

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