2013年7月13日土曜日

放火は重罪です

司法書士の岡川です

宝塚市役所の放火事件は、かなり大きな被害をもたらしているようです。

宝塚、市税滞納記録2万件が焼失 放火で庁舎復旧に2~3カ月(共同通信)
1階の火災現場では固定資産税など市税の滞納や徴収に関する台帳が焼け、約2万件の記録が失われたと明らかにした。庁内システムにデータが保存されていない資料もあるため、今後一部の業務が滞る可能性があるという。
市によると、農業台帳や市民墓地の申込書なども焼失したり水浸しになったりした。

刑法に規定された数ある犯罪類型の中でも、「放火」というのは、非常に重い犯罪です。
中でも、人が現に住んでいたり、人がいる建物を放火する行為(現住建造物放火罪)は、死刑を含む重い法定刑が規定されており、殺人罪と同等の犯罪とされています。
日本では、法定刑に死刑が含まれている罪というのは、基本的に殺人罪や傷害致死罪等の「○○致死罪」のように、人の殺害(死)を内容としている犯罪です。
犯した罪と、それに対する刑罰は均衡が取れていなければならないというのが刑法の原則ですので、例えば窃盗の法定刑として死刑が定められることは不合理な重罪として違憲となるでしょう。

しかし、現住建造物放火罪は、(量刑相場はさておき)法定刑だけをみれば、仮に人が1人も死ななくても死刑に処される可能性があります。
このように、人が1人も死ななくても死刑になる可能性のある罪というのは、とても珍しいものです(他は、内乱罪や外患誘致罪といった特殊な犯罪類型や、現住建造物浸害罪等に限られます)。
放火がこれだけ重い罪である理由は、建物だけでなく人の生命や身体にも重大な危険を生じさせる(場合によっては死者が多数出る)行為(公共危険罪)だからです。
特に日本では、昔から木造家屋が多く、火災が周囲にまで被害を及ぼす危険が大きいという社会的背景も指摘されています。

正常な人は、建物に放火しようなんて考えないでしょうが、子供が火遊びの延長で火をつけるようなことは絶対にやってはいけないという教育は必要でしょう。
それは、「軽い気持ちで人を殺した」と同レベルの(あるいはそれ以上の)行為なのです。

ところで、今回の放火では、けが人も出ているようですが、役所の記録なんかも失われてしまったようです。
庁舎を修繕したり、失われた記録を復旧したりする作業は、全て税金で行われます。
この犯人は、税金を滞納して差押えを受けた腹いせに放火したようですが、そのせいで貴重な税金が余計に使われます。
この上なく身勝手な、許しがたい犯罪ですね。

では、今日はこの辺で。

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