2013年5月31日金曜日

法改正ミスの責任

司法書士の岡川です。

たまにある立法ミスのお話。

財務省が、減税見直しの法改正をミスした結果、最大1億円の減収になってしまったそうです。
「徴収漏れ」という報道も見られますが、税の徴収自体は漏れていません。
 徴収の根拠となる法律の規定が「思ってたのと違う」だけです。

ミスの中身としては、バリアフリー工事をしたときに受けられる所得税減税の上限を、消費税率が上がる来年4月以降に入居する場合から引き上げる予定だったのが、その「来年4月から」という部分を条文に書き忘れたため、今年1月以降に入居した人の減税額も増額されていたらしいですね。

で、麻生財務大臣が謝罪して、担当者(財務官僚)が処分される予定です。


その「担当者」は、条文の作成を任されていたわけで、その自分の仕事にミスがあったのですから、内部的に何らかの処分があるのはいいとして、それよりちょっと言いたいのは、この日本で立法権を有するのは国会です。
中学生でも知っています。

官僚に立法権はなく、官僚に作ってもらった条文の“案”を、国会議員が自分らの責任で審議して、自分らの責任で正式に法律の条文にしたのです。

最終的にこの改正法を成立させたのは、国会ですよ。

「関係者」という意味でいえば、一番の関係者は国会議員全員です。
いや、むしろ関係者というより当事者といった方がよい。

特に、財務金融委員会(衆議院)と財政金融委員会(参議院)の委員らが、この改正案の中身を審議して「賛成」と手を挙げた(のか「異議なし」って言ったのかは確認できませんが)のではないですか?

ちなみに、成立に至るまで、内閣法制局のチェックも受けているはずですし、閣議において閣僚全員の署名もされているはずです。
もし、この改正法に不都合があるということで謝罪が必要だというなら、謝罪すべきは、財務省(を代表して財務大臣)だけでなく、内閣(を代表して総理大臣)、衆参の委員会(を代表して各委員長)あたりまで全員ではないでしょうか。
「官僚の不注意」で責任をその担当者だけに全て負わせるのはおかしいですね。
 まあ、財務大臣の責任を問おうにも内閣総理大臣も同罪だし、内閣総理大臣の責任を問おうにも、国会議員も同罪なので、みんなで仲良く謝罪するしかないでしょう。

財務省だけでなく、国会議員も含めて再発防止に努めてもらいたいものです。

では、今日はこの辺で。

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