2013年5月15日水曜日

公正証書とは?

司法書士の岡川です。

今日は「公正証書」のお話です。

公正証書とは、狭義には公証人が公証人法等の法令に基づき作成する文書をいいます。一般的に「公正証書」というと、この意味で使われます。

法律の専門家である公証人が、きちんと法令上の手続きを踏んで作成する公文書の一種ですから、一般市民が作成する文書より証拠としての価値が高いとされています。
そのため、重要な契約書を公正証書で作ったり、あるいは、遺言書を公正証書で作成するといった使われ方がされます。

ちなみに、一定の場合は、契約書等を公正証書として作成しなければならないと法律で定められている場合もあります。
事業用定期借地権の設定契約や任意後見契約は、公正証書で契約をしなければ、そもそも契約が成立しません。

そういった特殊な契約類型を除けば、基本的に契約というのは口約束でも成立するのが原則です(さすがに遺言は口頭ではできませんが)。

なので、契約を成立させるだけなら公正証書どころか、 当事者が自分で契約書を作る必要もありません。
では何のための契約書かといえば、それは後々の紛争を予防するため、あるいは紛争になったときのための「証拠」として作ります。
そして、契約書の中でも公正証書で作成した契約書は、効力としては普通の契約書と同じなのですが、公証人という専門家が職務上作成した文書なので、「あの契約書はあいつが勝手に作ったんだ」というレベルで争いが起こる可能性がぐっと低くなるわけです。

公正証書を作成するのもお金がかかりますので、ある文書を公正証書で作成するか、それとも自分で作成するかは、どこまで強力な証拠を残しておくか、そのためにどこまでお金と手間と時間(公証役場という公証人の執務場所で作成するか、日当を払って公証人に来てもらう必要があります)をかけるか・・・という判断になります。

(他にも公正証書の「証拠」以上の使い方はあるのですが、それはまた後日のネタとして。)



最初に「狭義の」と書きましたが、「公正証書」は、公証人が作成する文書という以外の意味があります。
広義には、「公務員がその職務上作成する文書で権利義務の得喪変更に関する事実を公的に証明する効力を有する文書」を公正証書といいます。
この意味での公正証書には、登記簿や戸籍簿なんかが該当します。

刑法157条の公正証書原本不実記載等罪でいう「公正証書」はこの意味なので、虚偽の申請をして登記官に不実の登記をさせたりしたら同罪が成立します。
虚偽申請ダメ。絶対。

あと、珍しいところでは、手形・小切手法上の「拒絶証書」は公正証書で作成しなければいけませんが、この公正証書を作成するのは公証人か執行官というふうに定められています(拒絶証書令)。
もっとも、この拒絶証書というのは一般的には作成されない(手形や小切手に、拒絶証書作成を免除する文言が入っている)ので、実際にお目にかかることはないでしょうね。


では、今日はこの辺で。

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