2013年5月11日土曜日

子の引渡執行

こんばんは。司法書士の岡川です。

昨日のブログでもありましたけど、法律関係の新聞の報道というのは、極めていい加減でして、だいたいどこか間違っているか、用語の使い方が不正確だったりします。
これは、たとえ「司法デスク」とかいう肩書の署名記事であったとしても同様です。

マスコミには、法学部出身者いないんですかね?
経済の専門家からしたら「マスコミの経済部の記事は嘘だらけ」と感じたり、理系の人からすれば「マスコミの科学系記事は間違いが多い」と感じたりするものなのでしょうか?

こういう記事がありました。

「離婚夫婦の子ども、引き離しは「原則自宅」に 」(読売新聞)
離婚した夫婦の子を裁判所の執行官が一方の親から強制的に引き離す「直接強制」について全国の裁判官らが協議し、学校や通学路などで行っていた強引な執行を取りやめることを決めた。
(中略)
直接強制は、家庭裁判所の審判などで子どもの引き渡しを命じても親が従わない場合などに、地裁の執行官が子どもの元に出向いて引き離し、もう一方の親に渡す仕組み。
これを読むと、「直接強制」とは 「執行官が子を連れていく制度」と思ってしまうわけですが、「直接強制」自体は別に子の引き渡しに限った制度ではありません。

執行官が相手方から目的物を取り上げて債権者に渡すという強制執行の方法を「直接強制」といいます。
一般的には、動産の引渡しや不動産の明渡しの強制執行のときに使われる制度です。
そして、この直接強制の方法を、子の引渡しの強制執行にも使うという話です。

民事執行法には子の引渡しの強制執行方法に関する規定がないのです。
そのため、 子(概ね10歳程度までの子に限るようです)を動産とみなして、動産の引渡執行の方法を使って強制執行します。
見たことはないですが、執行調書には「目的物」と書かれているようです。

子の引渡しを動産の引渡執行の形でやること自体批判はあるのですが、少なくとも、「通学路の途中で連れ去る」という誘拐まがいの執行はしないというルールが作られたようですね。

自宅で引渡執行をすると、執行官が相手の自宅に乗り込み、目的物(=子)を連れて帰ります。
相手が籠城すると、鍵屋に玄関を開けさせて乗り込むことになります。

まあどっちにしても誘拐まがいであることに違いはないのですが、子の引渡しを直接強制するということは、そういうことにならざるを得ないのです。
泣き叫ぶ子を親元から引き離して連れて行かなきゃいけないので、執行官も心が痛むとか・・・。


ちなみに、直接強制の対義語は間接強制です。

こちらは、相手が応じるまで金銭を払わせる方法です。
「さっさと言うこと聞かないと、債務額が増えていくぞ」と心理的に圧力をかける方法ですね。

ドイツなんかでは、「言うこと聞かないと牢屋にぶち込むぞ」という執行方法もあるんですけど、日本にはそれはありません。


裁判には勝訴したけど、相手が応じてくれない・・・とお困りの方は、司法書士までご相談ください。
強制執行申立書作成は司法書士のお仕事です。

では、今日はこの辺で。

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