2017年1月1日日曜日

【平成29年】謹賀新年

司法書士の岡川です。

あけましておめでとうございます。

旧年中は、更新頻度が激減したにもかかわらず、本ブログを相変わらずご愛読いただき、ありがとうございました。

今年も、できる限り停滞することなく、「知って得する情報や別にそうでもない情報」をたくさんお届けしたいと思います。


事務所ホームページのほうも少しずつ更新しておりますので、ブログともどもよろしくお願いします。


平成29年 元旦
司法書士 岡川敦也

2016年12月28日水曜日

失火の法的責任

司法書士の岡川です。

年末も押し迫った時期ですが、糸魚川にて大変な火災が起きましたね。

約150棟が焼けたようです。

損害は甚大ですが、幸いなことに死者は一人も出なかったようです。

さて、火災の原因は中華料理店で店主が鍋に火をかけたまま外出したことらしく、当然ですが、この店主の法的責任が問題となります。

法的責任というと、大きく民事上の責任と刑事上の責任が考えられます。

まず民事上の責任としては、過失により他人に損害を与えたら損害賠償をしなければならないという、不法行為の問題となります。
失火も当然他人に損害を与えていますので、損害賠償責任の問題が生じます。

ただし、木造家屋が多い日本では、失火による被害が拡大されやすいため、とても責任を負いきれません。
そこで民法709条の不法行為の規定の特別法として、失火による損害賠償責任を軽減する、その名もズバリ「失火ノ責任ニ関スル法律(明治三十二年法律第四十号)」という法律があります。
略称「失火責任法」というこの法律、条文は次の1つだけ。

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

要するに、失火の場合、原則として民法709条(不法行為)は適用しない(つまり不法行為責任は負わない)が、例外的に、重過失があるときは適用する(不法行為責任を負う)というものです。
被害者にとってはたまったものではないですが、それは、被害者が各自きちんと保険でカバーしましょうということになります。

ちなみに本件では、鍋に火をかけたまま外出するという、まあまあ重過失っぽいことをやってしまっていますので、責任を問われる可能性も高いでしょう。
もっとも、責任を負いきれないことは間違いなく、そうなると自己破産という話にもなるかもしれませんね。


刑事上の責任としては、放火罪とは別に、失火に関する犯罪類型というのが存在します(刑法116条以下)。
単純な失火罪であれば、50万円以下の罰金という比較的軽い犯罪なのですが、今回は、業務上失火罪にあたる可能性がありますので、その場合は、最大で3年の禁固の可能性があります。

ただ、今回は死者は出なかったものの、けが人は出たようなので、失火罪だけでなく、業務上(重)過失致傷罪が成立する可能性があります。
その場合、5年以下の懲役又は禁固に処されることになりますね。


というわけで、年末にあまりおめでたくない話題となってしまいましたが、火を使うことも多く、乾燥する時期ですので、皆さん失火には十分お気を付けください。

では、今日はこの辺で。

よいお年を。

2016年12月14日水曜日

認知症の人による事故に備えた社会的補償の必要性

司法書士の岡川です。

認知症の人が起こした事故について、社会的救済の仕組みの重要性が認識されつつあるところ、新たな制度が創設されそうな雰囲気があったわけですが、どうやら雰囲気だけで終わったようです。

認知症事故の公的補償見送り 連絡会議「民間保険で」

認知症の人による事故やトラブルの補償のあり方を検討してきた厚生労働省や国土交通省などによる連絡会議は13日、公的な補償制度の創設を見送る方針を決めた。徘徊(はいかい)中の認知症男性の列車事故で家族が損害賠償を求められた訴訟の最高裁判決を受けて協議してきたが、民間保険の普及や地域での見守り体制整備などで対応できると判断した。


議論のきっかけとなったのは、JR東海の認知症患者が引き起こした事故で、家族の損害賠償責任が否定された最高裁判決です。

この事件について、詳しくは過去の記事参照→「成年後見人の監督義務(名古屋の認知症患者の列車衝突事故に関する最高裁判決を踏まえて)

JR東海の事件自体は、家族の監督責任の成否が争点となっていましたが、これが(原則として)否定されることになり、結論としては妥当な判断だったわけですが、これを一般論として考えると、「認知症の人が他人に損害を与えた場合に、被害者は誰からも損害を補償してもらえない」という問題が生じます。

JR東海事故では、たまたま被害者が大手鉄道会社であり、かつ、損害といっても何らかの保険で填補される(詳しくは知りませんが)可能性もあるでしょうから、実害はそれほどない。
むしろ、「それで(直接の加害者ではない)家族に責任を問うのはおかしい」という話で済みました。

しかし、もし被害者が個人であったら、感情的には「被害に遭ったのに、誰も責任を問われないのはおかしい」という話も出てきます。


なぜこういうことになるかといえば、まず、加害者本人は責任能力が否定されることによって賠償責任を負わない。
そして、「過失責任の原則」や「自己責任の原則」がありますので、加害者以外の人が賠償責任を負わないのが民法の原則です。


民法上、誰の責任を問うこともできないのであれば、被害者を救済するには何らかの公的な補償の仕組みを作るしかない。
そういう発想から議論が始まっていたはずなのですが、今回それが「必要ない」という結論に至ったようです。


記事によると、

民間保険を利用したケースでは、認知症の人の加害行為で親族などが個人賠償を負ったのは1社あたり年数件ほど、損害額は数十万円ほどだった。

とありますが、そもそも「親族など」が賠償してくれるのであれば、それはそれでよいのです。
この場合、親族が賠償することで被害救済となり、かつ、親族としても保険(賠償責任保険)に入っていれば、保険金で填補されるからです。

そうではなく、親族の賠償責任が否定される場合が問題になるわけです。

被害者は、認知症の加害者本人が責任無能力者であれば、損害賠償請求できません。
そして、一般的な賠償責任保険は、被保険者の責任能力が否定される場合は、保険金が出ません。

最近は、被保険者の親族が監督責任を負う場合は、監督義務者としての損害賠償に対しても保険金が出るように約款が改定されているようですが、それでも親族も監督責任を負わないのであれば保険金が出ません。
なぜなら、賠償責任保険というのは、被保険者が第三者に対して損害賠償を支払うことになった際に、その損害賠償金に相当する額を保険で填補するためのものだからです。
この仕組みについては、過去の記事も参照→「自動車保険の仕組み(加害者側の保険)

保険会社からすれば、被保険者(やその家族)が誰も損害賠償責任を負っていないのに、損害賠償金を填補するための保険金を出してやる理由がないわけです。
仮に、「誰も賠償責任を負わない場合であっても、保険金を出す」という太っ腹な保険商品が出たとしても、認知症の人やその家族からすれば、賠償責任を負わないのであれば「賠償金を支払うことになる場合に備えて保険に入っておこう」という動機づけがありません。

ひとつの方策としては、責任無能力者制度を廃止する(そのうえで、保険加入を促進する)という議論もあるのですけど、あまり有力に主張されてはいませんね。


そうなると、専ら被害者側の保険(傷害保険とか生命保険)で被害救済するしかないことになります。
つまり、自分が転んでケガをしたり、自損事故を起こしたりした場合と同様に、「責任無能力者から事故を起こされた場合」にも備えて、保険に入っておこう、という話になるわけですね。


加害者側に立ってみると、確かに今ある民間保険に入っていれば「責任を負わないか、責任を負う場合でも保険で補償される」ので公的補償制度など必要ないのかもしれませんが、そもそも被害者側からみて、救済されない場合をどうするか、という問題だったと思うのですが…。

とりあえず自分の身は自分で守りましょう(被害に備えた保険に入ろう)ということになるんですかね。


では、今日はこの辺で。

2016年11月28日月曜日

空き家問題解決(予防)の前提としての権利関係の問題

司法書士の岡川です。

先週の土曜日に、大阪府と高槻市(及び関連団体)が共催する「高槻市 安心・安全 空家の管理・活用講座」という、市民向けセミナーが開催されました。
私も大阪司法書士会の空き家問題対策検討委員会の委員(高槻市担当)として、「次代に先送りしない権利関係のポイント」についてお話をさせていただきました。
同じものを今年の1月にも行ったのですが、その第二弾です(といっても、高槻市の他に、大阪府下の市でも別途開催されていますが)。

空き家問題については、大阪司法書士会も取り組んでおります(参照→「空き家問題」)。
本格的な取組みが始まる前から私もこの問題には関わっています。


今回、私が講師をしたパートのテーマは、空き家問題を解決する大前提である「権利関係の確定」の重要性についてです。

せっかくなので要点をここでも少しご紹介します。

空き家問題には、色々と細かい問題があり、課題は多岐にわたるのですが、権利関係に関して大きなポイントとしては2点です。
それは、「相続手続を放置しないこと」「共有関係を放置しないこと」です。

特に前者の問題が後者にもつながってきますので、最重要ポイントとしては相続でしょうか。


過去にも書きましたが、空き家を含む不動産(建物と土地)の権利関係を公示するのは、不動産登記という制度です。
いわゆる不動産の「名義」というのは、不動産登記制度を指し、名義を含む不動産の権利関係は法務局に備え付けられた登記簿に記載されています。

で、この不動産登記、特に権利関係についての登記は、「権利」であって「義務」ではありません。
つまり、あなたがこの不動産について何らかの権利を有していることを社会的に認めさせることができる権利を有しているのであって、権利者は権利者として登記しなければならないというようなものではありません。

ということは、不動産について特に実生活上の問題が顕在化していない(名義が誰なのかにかかわらず現実に居住できている場合など)場合、その権利を特に行使しない(登記しないで放置する)ということが少なくありません。

そのため、登記簿を調べてみると、不動産の名義人として登記されているのが明治時代の人だとかそれより前の人だとか、そういうことが結構あります。

そういった不動産についていざ活用しようと思ったとき(売るとか誰かに貸すとか)、そのままでは何もできません。
必ず、現在生きている相続人(「相続人の相続人」とか、「相続人の相続人の相続人」とかも全部含む)の全員の合意を取り付けて、一度相続登記を経なければならないのです。

関係者は5人とか6人とかいうレベルではありません。
20人30人に及ぶことも珍しくありません。

もう、ほぼ他人同士の集まりです。
「ほぼ」どころか、完全に他人だったりもします(法律上の親族関係にない人同士ということもあります)。

この全員に連絡がつき、協力を得られることが絶対条件になるわけです。
絶望的ですね。


相続人の人数が多いことだけが問題ではありません。
名義人が最近の人で、相続人の数がそれほど多くなかったとしても、そのうちの一人でも行方不明になっていたりすれば、それだけで手間と費用と時間がかかります。

この問題は「時間が解決する」ものではなく、むしろ「時間の経過とともに悪化する」ものです。
当事者の一人が死亡すると、その相続人が新たな当事者に加わるわけですから、それだけ権利関係がより複雑化するのです。


もちろん、解決する方法は色々あるのですが、時間がたてばたつほど手間と費用と時間はどんどん増えていきます。
つまり、なるべく早く問題解決のために動かなければ、それだけ損するということです。

相続にかかわる問題は、予防が何よりも大事で、いざ問題が顕在化すればなるべく早い段階で手続に着手することが重要になります。


それから、共有関係というのも問題です。
共有というのは、相続によって生じることが多いですが、不動産を買ったときに夫婦の共有にしておく場合などもよくあります。

共有というのは、非常に不安定な状態でして、共有物の管理には共有者の過半数や全員の同意が必要になることがあります。
また、共有者の一部が死亡したり行方不明だったりすれば最悪です(上記と同じ問題が、さらに複雑化して出てくるのです)。


当たり前ですが、共有物は簡単に処分ができないのです。

共有物については、「権利を失う可能性」など別の問題もありますので、特に共有にすべき事情がなければ、なるべく早めに解消することが望ましいと考えていただいた方が良いかもしれません。


まあ、そんなわけで、空き家問題の裏には、結構な確率で相続問題があります。
そして、財産管理の問題、成年後見の問題なども絡んできます。

空き家の問題についてはお近くの司法書士(高槻の方であれば、例えは、お近くの岡川総合法務事務所とかですかね~)へご相談ください。


では、今日はこの辺で。

2016年11月17日木曜日

【再告知】遺言と成年後見制度に関するセミナー【高槻】

司法書士の岡川です。

直前なので再度告知をします。

11月19日(土)に、遺言と成年後見制度に関する市民向けセミナーが開催されます。

【主催(共催)】
大阪司法書士会
公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート大阪支部
高槻市

【後援】
高槻市社会福祉協議会

【場所】
高槻市立総合市民交流センター(クロスパル高槻)

【内容】
○法律講座(午後1時~3時)
 ・第1部「相続と遺言~私の大切な人へ私がのこすもの~」
 ・第2部「これから始める成年後見」
○相談会(午後3時~5時)

詳しくは、こちらにチラシが掲載されています。

高槻市役所のホームページでも確認できます。

高槻市在住で、相続のこと、遺言のこと、成年後見のことに関心がある方は、是非お気軽にお立ち寄りください。


では、今日はこの辺で。